13.日本気象学会裁判

日本気象学会による論文掲載拒否事件

 学会の主要な学説と対立する学説に対して、科学論争として学会内の自由な議論を保証することを求める裁判。

 具体的には、「原発推進のためのCO2温暖化説」は間違いと述べる科学論文の掲載を日本気象学会が不当に拒否しているので「掲載せよ」と要求している裁判。

東京地方裁判所 平成21年(ワ)第17473号損害賠償請求事件
原告:槌田敦
被告:(社)日本気象学会
訴訟価額:金100万円也

請求事項
  1. 被告は原告に対し、金100万円を支払え。
  2. 訴訟費用は被告の負担とする。

訴訟の内容

 近藤邦明と槌田敦は、 「CO2増で温暖化したのではなく、温暖化したのでCO2増となった」ことを示す事実を発見し、これを気象学会誌に投稿した。
 しかし、気象学会は、この「近藤・槌田の発見した新しい事実」について、理論的に否定できなかったため、 「35年間のデータ」に基づく長期の研究を「数年スケールの変動」の短期的研究と誤読することで、その掲載を拒否した事件である。

裁判の争点

 争点はただひとつ、気象学会誌編集委員会の裁量権であった。
 被告気象学会は、論文掲載 の判断は自由裁量であるかのように主張した。そこで、判決は気象学会誌においても一般商業誌の編集権と同じように自由裁量が適用されるかどうかについて判 断がなされることになる。
 もしも、そのような判断がなされるならば、編集委員会の好む主張だけが掲載されることになり、気象学会誌では科学論争 ができないことになる。

判決

 2010年3月18日(木)13時 東京地裁527号法廷
 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

原告のコメント

 判決では、この 被告の誤読については一切判断せず、被告が「相応の科学的根拠をもって掲載することができないとした」と認定して、不法行為は成立しないと判断した。 「相応の」という表現で、判決は「科学論争」の領域内に踏みこみ、 CO2による温暖化説の側に立ったことになる。

 その一方、判決理由では「論文の内容と無関係に論文の掲載を拒否」することを、不法行為としている。まさに本件は、 「長期的研究の論文」なのに、内容に無関係な「短期的研究」と言い変えて、論文掲載を拒否した事件。しかし原告敗訴、支離滅裂の判決。

 当然、高裁に提訴する。今度の実質的相手は気象学会ではなく、東京地裁である。

 次回 控訴審(東京高等裁判所)

リンク

1. 原告代理人(柳原敏夫弁護士)による解説と裁判資料集