13.日本気象学会裁判 >
b1)控訴審の状況
CO2温暖化を問う2つの裁判(13)
2010年9月1日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 最高裁判所への上告を準備している。 東京地裁は、 「投稿者からみて科学的には異論が十分にあり得たとしても、拒否行為が相応の科学的根拠に基づく以上、不法行為は成立しない」として、原告の請求を棄却した。一方の見解の側に立ち、他方の見解を排除することは、学問の自由の侵害である。 東京高裁は、これに加えて、査読指針について「編集委員会の考え方をまとめたものにすぎないのであって、これによって編集委員会に控訴人が主張するような法的義務が発生するようなものではない」とした。また、査読指針にある主な審査対象としての研究の学術的価値・新規性など4項目を「例示的に列挙しているに過ぎない」として、 「査読者の参考意見を理由に掲載を拒否した」という原告の主張を採用しなかった。この高裁判決は査読指針を気象学会における内部法規とは認めないことで成り立つ論理であり、この点でも内部法規によって守られる学問の自由を否定するものである。 添付資料 査読指針 |
CO2温暖化を問う2つの裁判(12)
2010年8月26日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 東京高等裁判所は、 8月25日、 ①本件控訴を棄却する②控訴費用は捷訴人の負担とする、と判決した。その内容は、原判決の判断を、一部字句訂正したほかは、全面的に引用し、これに「披控訴人の広範な裁量の下において実現される」と補足して.捷訴人の主張をことごとく擦ねつけた。 控訴人は、原判決の間違いとして、気象学会は諸規則により運営され、これにより裁量の範囲は制限され、論文掲載は査読指針によると指摘した。この査読指針によれば、論文採用の必要要件と査読者の参考意見は区別され、参考意見は短報として別に掲載することで解決される。つまり、査読者の参考意見は学会誌の誌上討論として公開される。 事実経過では、提出論文は2回の査読で必要要件は解消され、残るは査読者の参考意見との著者の意見の相違であった。これは、査読指針にあるように、査読者による短報掲載で解決できる。しかし、判決はこれを採用しなかった。 つまり、気象学会は.公正に審査をするための査読指針を無視し、悪意的に審査したのであるが、高裁はこの査読指針に反する審査を容認したもので、不当である。 この高裁判決によれば、論文掲載について、科学的見解の一方の立場で、他の科学的見解を排除できることになり、学閥の自由が犯される。最高裁への上告を検討する。 添付書類 高裁判決、地裁判決判断の引用部分 |
CO2温暖化を問う2つの裁判(11)
2010年8月5日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 前回の口頭弁論で、裁判長は次回(8月25日)判決と通知した。そこで、控訴人の新しい代理人阿部裕行弁護士と塩川泰子弁護士が記録を整理したところ、新たな問題点が見つかり、準備書面(2)と本人による陳述書(6)を提出した。 内容は、一審では提出論文を編集委員会と査読者が誤読し、採用拒絶したことで争ったが、二審では、編集委員会の編集作業での著者に対する注意義務違反とし、相反する意見で著者を翻弄した両査読者に対して編集委が問題解決する努力をしなかったこと、そして査読者Aによる突然の意見変更に対し著者に説明の機会を与えなかったことを指摘した。また酷似論文の出現で控訴人の精神的苦痛が増大していることも指摘した。 そして、これらの新主張を理由にして、証拠調べとさらなる主張の機会を求めて、控訴人側は弁論再開を申し立てた。これらの問題は、高裁における新しい争点の提起であり、これまでの証拠だけで審理がつくされたかどうか、また編集長と査読者Aの証人尋問について、東京高裁は判決を延期して、弁論再開するかどうかを裁定することになる。
添付書類 控訴人準備書面(2)、控訴人陳述書(6) |
CO2温暖化を問う2つの裁判(10)
2010年7月13日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 控訴人(原告)は、控訴理由書を準備書面(1)(6月11日付)に全面的に差し替えた。被控訴人は、これに対する認否・反論として準備書面(1)(7月12日付)を提出した。 まず、控訴人は、地裁判決での「投稿者からみて科学的には異論が十分にあり得たとしても、拒否行為が相応の科学的根拠に基づく以上、不法行為は成立しない」としたことについて、これでは気象学会は主淀と意見を異にする論文を気象学会誌に載せなくてもよいことになる、と述べた。被控訴人はこれを争わなかった。 ついで、控訴人は、初審で論文の「誤読」を争点にしたが、判決では「誤読」について判断しなかった。これを判断していれば、 「拒否行為が相応の科学的根拠に基づく」とは言えないのだから、初審判断はあり得ないことになる。被控訴人はこれも争わなかった。 その他の争点の認否については、次号のふたつの裁判報告で詳しく述べることにする。 高裁は、原則として口頭弁論は1回だけという方針とのことで、この事件も、口頭弁論は7月12日の1回だけで終了ということになった。 そこで、控訴人側代理人により論点整理を述べる機会がほしいと求めたところ、 7月中に書面を提出することになった。また、控訴人は、酷似する論文が現れ、控訴人は極めて不利な立場なっているので、和解交渉に応じてほしいと求めた。被控訴人はこれを拒否した。酷似する論文を証拠にするためには、日本語訳が必要になる。
添付書類 控訴人準備書面(2)、被控訴人準備書面(1) |
CO2温暖化を問う2つの裁判(9)
2010年7月7日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 控訴審の進め方で代理人と意見が合わず、しばらく本人訴訟の形をとっていたが、新しく阿部裕行弁護士と塩川泰子弁護士にこの気象学会事件をお願いすることにした。東京大学事件の方は、これまでどおり本人訴訟とする。
第1回口頭弁論では、代理人により論点整理をすると述べ、また原告からの和解提案(酷似する論文に対する扱い)について意見を述べることになる。 添付書類 控訴人準備書面(1) ※※Web編集部より※※ Webで読みやすくするため一部字句を修正しています。原文は「02.原告からの報告」にあります。 |
CO2温暖化を問う2つの裁判(8)
2010年6月21日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 前回、当面、代理人なしで訴訟を進めることになったことを報告したが、本日、代理人のみで作成した控訴理由書本文の全面削除、その準備書面(1)に差し替えを届けでた。 また、気象学会誌編集長、両査読者、大会企画委員長の証人尋問を申請した。 ところで、近藤・槌田論文(2008年4月投稿)と同じ目的と内容の論文がインタネットに存在するという情報が寄せられた。これは、Lon Hocker "The temperature rise has caused the CO2 increse, not the other way around"(2010年6月)で、われわれの発見したのと同じ①気温とCO2濃度変化率の位相関係および②その数値関係により、「気温高がCO2濃度増の原因」を論じている(この論文は「Lon Hocker」で検索可)。 このまま放置すれば、近藤・槌田論文は、気象学会の受付拒否で公開されていないので、この発見はどちらが先かという国際的争いになる。そして、日本気象学会による論文発表の妨害と科学論争に介入した東京地裁が国際的に明るみに出ることになる。 そこで、本日、東京高裁にこの論文を示して、そのようなつまらない争いにならないようにするため、可能な限り早く気象学会誌『天気』に、控訴人らの論文が掲載されるよう、和解調停に入って頂くよう申しいれた。扱いは次回の法廷で決まることになる。
科学では、ほぼ同時に同じような発見がなされ、また他方で論文発表の妨害がなされる。今回の場合、学会の「査読制度」が、その妨害に利用された。 ところが、気象学会には、編集委員会作成の「査読指針」が存在する。そこには査読者と著者の見解の相違は論文不採用の条件ではなく、査読者が「短報」を書くことで誌上討論とするよう勧めている。「誤読」のみを論じた初審では使わなかった証拠である。 和解不調の場合には、編集委員長尋問でこの自ら定めた「査読指針」無視の経緯を明らかにする。7月には裁判が続きますが、ぜひ傍聴にきていただくようお願いします。 ※※Web編集部より※※ Webで読みやすくするため一部字句を修正しています。原文は「02.原告からの報告」にあります。 |
CO2温暖化を問う2つの裁判(7)
2010年6月12日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 3月18日の敗訴でただちに東京高裁に控訴し、控訴理由書を提出したが、その内容に控訴人(原告)の主張が取り入れられていないため、準備書面を書くことになった。 しかし、 「なぜ地裁で敗北したのか、準備書面で何を主張するか」をめぐって代理人と意見が合わず、代理人契約を解消し、当面、代理人なしで訴訟を進めることになった。 準備書面(1)は控訴人の書いたものを、 6月11日、東京高裁に提出し、受理された。その内容は徹底して東京地裁判決批判とし、 ① 論文発表および口頭発表の権利は、気象学会の諸規則で守られている。 を陳述する。② 今回の事件はふたつの科学的見解の対立。 ③ 論文誤読についての黙秘は、民訴法第159条により自白。 ④ 東京地裁は判決で学会の論争に介入。 ⑤ 悪意に満ちた判決。 ⑥ 大会での研究発表の排除は気象学会細則11条の違反。
判決で「投稿者からみて科学的には異論が十分にあり得たとしても、拒否行為が相応の科学的根拠に基づく以上、不法行為は成立しない」とした点について、 「気象学会の主流と意見を異にする論文は、今後一切気象学会誌に載せなくてもよいことになる。これは科学進歩の否定であり、定款に違反すると、徹底的に批判的陳述をする予定。 7月には、裁判が続きますが、ぜひ傍聴にきていただくようお願いします。 ※※Web編集部より※※ Webで読みやすくするため一部字句を修正しています。原文は「02.原告からの報告」にあります。 |
CO2温暖化を問う2つの裁判(6)
2010年5月30日 原告槌田敦は、以下の報告を公表した。 3月18日の地裁判決では、被告の「誤読」については一切判断せず、被告が「相応の科学的根拠をもって掲載することができないとした」と認定し、不法行為は成立しないとしたので、東京高裁に控訴することにした。
原告側は、すでに提出した控訴理由書を陳述する外、この理由書に加えて、判決を批判する追加的主張を準備書面として提出する。 すなわち、判決で「投稿者からみて科学的には異論が十分にあり得たとしても、拒否行為が相応の科学的根拠に基づく以上、不法行為は成立しない」としている点について、徹底的に批判をする。これでは気象学会の主流と意見を異にする論文は、今後一切気象学会誌に載せなくてもよいことになる。これは科学進歩の否定であり、定款に違反する。 ※※Web編集部より※※ Webで読みやすくするため一部字句を修正しています。原文は「02.原告からの報告」にあります。 |
控訴理由書を提出
原告の槌田敦は、日本気象学会の論文掲載拒否事件につき、 3月26日 東京高裁に控訴しましたが、 5月17日、控訴理由書を提出しました。 第1回口頭弁論は、 6月21日(月)10時、東京高裁8階809号法廷でおこなわれます。 傍聴歓迎いたします。傍聴券不要です。直接法廷にお出でください。 |
CO2温暖化を問う2つの裁判(5)
2010年4月14日 原告槌田敦は、日本気象学会による論文掲載拒否事件の裁判について、以下の報告を公表した。 3月18日の地裁判決では、被告の誤読については一切判断せず、被告が「相応の科学的根拠をもって掲載することができないとした」と認定し、不法行為は成立しないとした。 このような判決は一般雑誌では妥当である。採用してくれる別の雑誌を探せばよい。 しかし、科学雑誌でこの方法を使うと、一方の見解で他方の見解を排除できるから、科学論争にはならない。まして気象学会はひとつしかないから、他方の見解は気象学者に伝わらない。物理学会誌にはその論文要旨が掲載された(2010年4月号p266)が、これでは気象学者間の科学論争にはならない。そこで、東京高裁に控訴することにした。
この控訴文は、原判決の変更を求める、という簡単なものである。今後、6月下旬に控訴の理由書を提出するまで、しばらくこの裁判は休憩ということになった。 ※※Web編集部より※※ Webで読みやすくするため一部字句を修正しています。原文は「02.原告からの報告」にあります。 |
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